第28回開発教育全国研究集会
8月7日、8日、第28回開発教育全国研究集会(主催 特定非営利活動法人開発教育協会)が東京広尾のJICA地球ひろばで開かれた。
開発教育とは「私たちひとりひとりが、開発をめぐるさまざまな問題を理解し、望ましい開発のあり方を考え、共に生きることのできる公正な地球社会づくりに参加することをねらいとした教育活動」である。(開発教育協会)
今回は、第1部「実践フォーラム」では開発教育を「広げる」ことを目的に、第2部「研究フォーラム」においては開発教育を「深める」ことを目的に行われた。
8月7日「実践フォーラム」
8月7日の「実践フォーラム」では、まず、ワークショップとして開発教育入門講座、世界がもし100人の村だったらなどが行われた。
続いて全体会「学びの場におけるファシリテーター」では、中野民夫氏(ワークショップ企画プロデューサー)、丸山まり子氏(小学校教員)を交えて、グループに別れ「先生とファシリテーター」、「学びを行動につなげるには」をテーマに参加者がワークショップを行い、「学びの場におけるファシリテーター」の役割や可能性を考えた。
そして、自主ラウンドテーブルでは、高校生が考えたアクティビティ「非識字体験ゲーム&平均寿命ゲーム」、フルモデルチェンジして再登場!「マジカルバナナV3」、ハンドブック「ESD・未来をつくる授業・実践」などが行われた。
この中の「お笑い開発教育のすすめ」では、開発教育落語から始まり、開発教育を分かりやすく楽しくするためのお笑い開発教育の提案、参加者によるフォーラムシアター的な寸劇づくりを行った。
ESD学校教育研究会では、ハンドブック「ESD・未来をつくる授業・実践」を行った。
教員と市民のESD学校教育研究会では、全国で学校での授業実践の「公開研究会・授業デザインフェスタ」を行うことで授業や学校づくりの生かしており、その成果を年報「ESD授業デザイン」にまとめ「ESDカリキュラム・学習計画検討会」を行い、全体計画や学校での進め方の検討を行っています。
「今年度は、ESD授業デザインハンドブック「ESD・未来をつくる授業・実践」としてこれらの実績を踏まえて、児童・生徒の未来のために多くの教師達が行っている授業・実践を「ESD・未来をつくる授業・実践」として紹介し、児童・生徒の未来と社会・世界の未来をつくるための授業・実践を支援するものを作成します。
参加者とともに開発教育・参加型開発の実践を聞きながらESD授業デザイン ハンドブック「ESD・未来をつくる授業・実践」の検討を行いたいと思います。」(趣旨)
ESD学校教育研究会の長岡素彦の「ESD・未来をつくる授業・実践」と松田剛史の「ESDと新指導要領」の発表が行われた。
8月8日「研究フォーラム」
8月8日の「研究フォーラム」では、まず、実践・研究報告として「グローバル化のもとでの参加型地域開発と開発教育-北タイNGOとDEARとの参加型学習を通した協力活動」、「体験的学習から得られるもの―ストリート・チルドレン体験を通して―」、「ESD 参加型開発とコミュニティーワーク、まち育て」などが行われた。
この中の「世界に目を向けよう~今、私たちにできること」では、さいたま市立の中学校の卒業生と生徒、地域の人々などが中心となり行われている活動で、最初は中学生が世界のこどもたちに関心を持ったことがきっかけに、「世界の現実を学習し、自分達にできることは何かということを考える」ための学習会と実践活動を長年続けているとのこと。
持続可能な開発のための教育の10年さいたまでは、「ESD 参加型開発とコミュニティーワーク、まち育て 」を発表を行った。
「開発教育・開発の参加型開発・コミュニティオーガナイザーと福祉教育・福祉のコミュニティワーク・コミュニティワーカー、まち育て〔まちづくり・学習〕の実践と多くの共通点があるが、相互の関連づけや実践交流が少ない。従来からESDとしてこれらをつなぐ活動を行い、昨年は日本福祉教育・ボランティア学習学会の会員との事例検討により、開発教育・参加型開発と福祉教育・ボランティア学習・コミュニティワークについての研究・実践報告をまとめた。また、まち育て〔まちづくり・学習〕の実践をESDとして参加型開発につなげる実践・検討ををまちづくり現場での交流や(財)住宅総合研究財団の「住まい・まち学習」実践報告・論文集での発表・検討などで行ってきた。今回、参加者とともに開発教育・参加型開発の実践者と福祉教育・ボランティア学習・コミュニティワーク、まち育ての検討を行い、相互に実りあるものとしたい。」(趣旨)
持続可能な開発のための教育の10年さいたまでの代表長岡素彦が発表を行った。
次に、講演会「オルタナティブな経済と開発教育」として西川潤氏(早稲田大学)が講演を行った。西川氏は開発教育の役割、グローバリゼーションとオルタナティブ経済、開発の現状を述べ、ポスト開発の時代の到来と共生するコミュニティを倫理による再建と開発教育について述べた。その後、グループに別れ参加者がこれらのテークにワークショップを行った。
そして、課題別分科会では、「フェアトレードとオルタナティブな社会」、「多文化社会における開発教育とは-「ひとの移動」の視点から考える」、「激動することばと開発教育」などの多様なテーマが行われた。
この中の「先住民族・アイヌをめぐる課題と開発教育」では、上村英明氏(恵泉女学園大学)の国連「先住民族の権利に関する宣言」などの世界的な動きや先住民族・アイヌへの政府の対応、北原きよ子氏(関東ウタリ会)は先住民族・アイヌのおかれている状況を述べた。これらを受けて、開発教育として先住民族・アイヌ問題に取り組むことをグループに別れ参加者がワークショップで考えた。
今回の開発教育全国研究集会では「共に生きることのできる公正な地球社会」、「オルタナティブな社会」を目指す開発教育として今まで取組みが少なかった経済や先住民族・アイヌなどの問題を取り上げ、ポスト開発の開発教育のあり方が検討された。
また、高校生が考えたアクティビティが発表され、高校生が格差や世界の未来を考えるために参加していた。
開発教育全国研究集会の報告
第28回開発教育全国研究集会|2010年8月7日~8日|開発教育協会