除染:磁石で効果、セシウムを6割減 山形大が発表、宮崎大と共同研究
/山形毎日新聞 2013年05月09日 地方版
放射能汚染土に磁石をかざすことで、磁性を持つ土と一緒に放射性セシウムが半分ほど磁石に引っ付いてくることを、山形大理学部の岩田高広教授の研究チームが発見した。岩田教授が8日に記者会見で発表した。岩田教授は「こんな簡単な方法で放射性セシウムを検出できるとは盲点だった。除染の方法の一つとして活用できるかもしれない」と話している。
実験は、福島第1原発事故後の11年4月30日に福島県飯舘村で採取した放射性セシウムを含む土壌60グラムを、磁力の強い「ネオジム磁石」を使って磁性を持つ土12グラムを分離。その成分を分析した結果、土壌60グラムに含まれる放射性セシウム全体の約58%が取り込まれていることが分かった。
飯舘村周辺の土壌に含まれる磁性の強い粘土鉱物「バーミキュライト」などが磁石に引き寄せられる際、セシウムも一緒に引っ付くとみられる。
実験は学生の卒業論文のために岩田教授が指示した。「磁石ではセシウムを除去できない」と予想していたが、結果は正反対だったという。同様の実験はこれまで例がなく「実験してみようという研究者もいなかったのだと思う。やってみて良かった」と話す。
ネオジム磁石は小学校の理科の実験などでも使われる安価な磁石。岩田教授は「庭の土全部をすくわなくても、砂鉄を集めるように磁石にビニールを巻いて、磁石に付いた土だけを除去することで、放射能を低減できる」と話している。
宮崎大の松田達郎教授の研究チームとの共同研究で、日本アイソトープ協会の発行する専門誌「ラジオアイソトープス」に掲載予定。今後、福島県全域の土壌の成分を調査し、飯舘村と同様の有効性があるかを確認するという。【前田洋平】