「地域・流域との共生に向けて」
日本共生科学会
5月14日、日本共生科学会の公開講演会「地域・流域との共生に向けて」が東京の和光大学で開催された。
日本共生科学会は、人と人、人と自然の共生を理念としてそれを具現化する研究を行う学術団体である。
今回の講演会は、大学の地域共創と活動、大学の流域貢献と教育をテーマに行われた。
「大学の地域共創と活動の評価-学生の環境まちづくりを中心に」として、村山史世氏 (麻布大学 生命・環境科学部 環境科学科)が麻布大学の学生が協働でつくった大学の地域共創を語った。
まず、大学が地域社会で他の主体と共生してゆくには、大学の一方的な「地域貢献」、双方向的な「地域連携」の他にも「地域共創」、つまり、「大学が地域の一員として他の主体と協働して地域を創造してゆく取組」があるという。
麻布大学では、学生たちが自ら始めた環境活動が商店街やNPO、そして地域に広がっていく過程で「地域共創」を生み出し、それを自治体も含めた「さがみはら環境まつり」や「親と子の自然環境セミナー」などの公共を担うまでになった。
また、全国の様々な環境まちづくりによる地域共創の実例をあげながらその成果について語り、「活動の評価」について述べた。
その成果とは、地域共創では異なる価値を持つものが実践し交流することで、新しい価値を生み出し、それに基づいて、主体を超えた継続的な活動が生まれるということである。この過程において、間主観的な主体それぞれが評価しあうことで、新しい価値を生み出す。
「大学における流域貢献と環境シチズンシップ教育」として堂前雅史氏 (和光大学 現代人間学部 身体環境共生学科)は、教員とー学生の自然保護活動である「かわ道楽」から発して和光大学が流域生態系を地域貢献の単位としている自然環境と人間生活の共生を考える教育GPプロジェクト「流域主義による地域貢献と環境教育」とそれから生まれたカリキュラムと地域・流域共生センターの活動について述べた。
都市部において身近な自然を見直し、保全する活動が地域をつなぎ、「大学が地域社会の一員として地域を作っていくという直接的な効果とともに、積極的に社会参加する市民を生み出すという」という。
また、この教育の営みが、持続可能な社会を築く「環境シチズンシップ教育」となっていることを述べた。
質疑応答では、これらの地域・流域との共生について熱心な論議がされた。
村山氏は、後日、学生に「みなさんの活動を含めて学生の活動を応援しながら,学生と教員と市民で「地域を共に創ってゆく」こと自体の評価。そして学生や市民がある活動を振り返り次につなげてゆくための自己評価の意義を確認すること」が出来たと述べた。
付記 日本のシチズンシップ教育
今回の「環境シチズンシップ教育」は優れたものであるが、日本では既に生徒・児童がまちを調べて議員や首長に提案する自治シチズンシップ教育や奉仕ではなくボランティアを通じて行われるボランティアシチズンシップ教育が成果をあげており、また、言うまでもなく、日本の開発教育・国際理解教育などのグローパルシチズンシップ教育は海外でも高い評価を得ている。
また、ESDではこれら多様なシチズンシップ教育を含み、また、「環境シチズンシップ教育」として多くの実践・展開が行われている。