第29回開発教育全国研究集会「オルタナティブな教育と開発教育」
8月7日(日) 研究フォーラム
まず、実践・研究報告として、関東大震災の震災作文の学びから『知る→行動する』を問う、「世界中の子どもに教育を」キャンペーン2011~女の子と女性の教育~、微生物とわたしたちのくらし、つながろう 広げよう ESDの輪~教育委員会との連携による普及戦略などが行われた。
この中で、実践・研究報告「東日本大震災以降の社会のためのESD~「情報力」「調査力」「社会構想力」を長岡素彦(ESD学校教育研究会、ESD学校教育研究会・iSPP情報支援プロボノ・プラットフォーム)が行った。
「総会の「開発教育の役割と課題~東日本大震災を受けて」を受けて、これから必要とされる学習と実践について今までのESDの研究・実践内容を提 示し、参加者と検討したいと思います。東日本大震災では、ネットを主とした情報環境が力を発揮し、発表や報道をどのように読み解くかが重要であり、メディアリテラシーやICTリテラ シーを含めた「情報力」が重要となってきます。また、自然、災害、原発など被害の正確な知識やそれを検証する「調査力」が重要となってきます。そして、何よりも、今回の震災で今後の社会をどのようにしていくがをみんなで考えるための学習と 行動のための「社会構想力」が重要となってきます。ここでは、今まで持続可能な社会構築のためにESDとして養いたい力として、東日本大震災以降の社会でますます必要となる「情報力」、「調査力」、「社会構想力」に絞って論議したいと思います。」(趣旨)
まず、震災や原発災害を持続可能な開発から考えて、福島とその恩恵に預かっている関東の世代内公正や今、放射能によって被害を被る未来世代のこどもたちと大人との世代間公正を基本としてどのようなことが考えられるのか、また、教育はどのような役割を果たせるのかなどを述べた。
次に、震災における情報や検証の重要性や新たな社会構想におけるESDの役割を語った。
特に、震災以降にジャスミン革命の様なソーシャルパーシフトが日本でもおこっており、どのように「情報力」、「調査力」、「社会構想力」を育み、それをどのように学習と教育にして、世界を変えて行くのかなどを述べた。
その後、ワークショップでは参加者が、自分の地域や自治会などでどうしたらいいのか、東日本大震災以降の社会のためのESDや「情報力」「調査力」「社会構想力」を論議した。
次のシンポジウム「オルタナティブな教育と開発教育」ではシンポジスト里見実氏(教育学者)と谷口康代氏(静岡市立長田北小学校教員)を迎えて論議を行った。
「開発教育は、過去30年近く、「公正で共生が可能な地球社会づくり」「オルタナティブな開発」に向け、教育内容、教育方法、教材、教師・指導者、ネットワークなど、さまざまな観点から、教育のあり様を、実践的理論的に提案してきました。ではこの開発教育は、オルタナティブな教育という観点からは、どのような捉え直しが可能なのでしょうか。また持続可能性、エネルギーなど新たな社会的課題が顕在化する中で、開発教育は、今後どのようなオルタナティブな教育をつくり出して行くことが求められているのでしょうか。あらためて登壇者と参加者で考えたいと思います。」
まず、司会の山西優二氏は(早稲田大学)、ここではオルタナティブな教育とは、既存の教育に革新性ををもった代替的な教育であると述べた。
谷口氏は小学校での状況と教育実践からオルタナティブな教育を述べた。中山間地の小さな学校から年の学校までを経験した同氏は、こどもたちがおかれている孤立や家庭環境を述べ、その中で状況にあった教育を時察せんして来たという。
たとえば、総合的な学習にしても、そのテーマはこどもたちの現状にとってどうなのか、また、どのような変わってもらいたいかを考えて実践している。
里見氏は、教育のオルタナティブを考える事は、文化を立て直すことであると語った。そのためには、対話が重要で、それは「遊び」からも生まれる。この遊びを再活性化しつつ、対話を本格的に深めて行くために授業が必要であるという。
また、現在の教育は近代の相対化を行っていない教育なので、近代を相対化し、近代の果ての今の社会を問い直す別の教育、オルタナティブな教育が必要とされる。
この後、ワークショップでは参加者がオルタナティブな教育を論議し、バネリストと質疑応答した。
その後の課題別分科会「多文化社会における開発教育とはPart2~一人ひとりの内面に向き合う」、「9.11から10年~平和を築くための教育を考える」、「エネルギー問題と開発教育」などが行われた。
この中で、第1分科会「オルタナティブな教育と開発教育」ではシンポジウムでの議論をより具体的に掘り下げ、学校教育現場におけるオルタナティブを考えた。
コーディネーターの石川一喜(拓殖大学)氏は、ワークショップでグループに分かれた参加者に「学校にあるもの(欠かせないもの)」を論議してもらい、それをもとに、参加者は学校教育現場におけるオルタナティブを考えた。
その後、谷口康代氏(静岡市立長田北小学校教員)は、学校にはその学校の積み重ねや枠があり、その中で、組み替えたり、新しくしていくことを今やっているという。
また、保護者も悩んで苦しんでいる側面があり、それを理解してどう変えて行くのかが重要で、こどもたちや父兄や学校でつながりをつくることで、自分も変わる事が出来た。
本山明氏(葛飾区立本田中学校教員)は、教育と学校の現状からこどもで教員同士、保護者とつながることや学校の自分から役割からオルタナティブな教育としての学校について述べた。
9.11も今回の震災もこどもたちが感じて、考えはじめていることを学習にする事が重要だと考えても実践して来たという。
この後、参加者がオルタナティブな教育を論議し、バネリストと質疑応答した。
「オルタナティブな教育」というと、今の教育とまったく違う「別の教育」の論議が多いが、今回は、震災や社会、学校の現実の中から、多くの実践とともにオルタナティブな教育を検討する事が出来た。
震災復興や新しい社会の構想も、一挙にったく違う「別のもの」はつくれない。
地域や学校から既存の教育から革新性ををもった代替的な教育を考える事が震災復興や新しい社会への向かう道のひとつではないか。
追加
開催レポート1日目|第29回開発教育全国研究集会|2011年8月6日~7日|開発教育協会
開催レポート2日目|第29回開発教育全国研究集会|2011年8月6日~7日|開発教育協会
開催レポートおまけ|第29回開発教育全国研究集会|2011年8月6日~7日|開発教育協会