アイデア結集、除染支援 研究者有志が調査・実験 飯舘村
福島第1原発事故で計画的避難区域となった福島県飯舘村の除染を専門知識を持ち寄って支援しようと、研究者有志の集団「ふくしま再生の会」が村内で実験を行っている。住民と組んで畑や山林で多角的な除染のアイデアを試し、避難先からの「2年後の帰村」を計画に掲げる村に成果を提案したいという。
ふくしま再生の会は、「物理の知識で被災地復旧に役立ちたい」という工学院大客員教授の田尾陽一さん(70)らが発起人となり、6月下旬に発足。放射線に詳しい専門家、首都圏の大学や研究機関、企業の研究者やOB、医師ら約70人が連携する。
村を支援する相馬市のNPO代表大石ゆい子さん(55)がつなぎ役になり、同村佐須地区の農業菅野宗夫さん(60)=村農業委員会会長=ら住民と協力。メンバーが毎週同地区を訪れ、生活と農業の再生に目標を置いた調査や実験を重ねている。
会は、車を使った村内の放射線量の分布マップ作りを手始めに、水系の調査、家屋の洗浄、植物による土壌除染を調べる試験、山林除染の調査などに取り組んできた。
植物の試験は9月、菅野さんの牧草地に菜種やイタリアングラスなど冬越しの作物9種類を作付け。セシウムの吸収や生育の健全さ、バイオ燃料になる可能性も調べる。
山林の実験では、表皮をはいだ木の年輪部分が汚染されていないと分かり、田尾さんは「木材として村の産業再生に利用できるのでは」と話す。
山林では落ち葉の放射線量が高い。村の集落は里山に近く、会と住民は「生活環境からの放射線除去には、家だけでなく裏山の除染も必要」と話し合い、9月末から民家裏の林で実験を始めた。
米国製の落ち葉の大型掃除機を企業の支援で村に運び、吸い取り実験を行ったところ、線量は半減したという。「落ち葉をためる袋の材質、仮置き場の確保など検討課題は多いが、一定の結果は出た。より広い面積で試したい」と田尾さん。
伊達市で家族と避難生活を送る菅野さんは「除染は帰村への一番の課題だ。地元と研究者がじかにつながり、知恵を集める取り組みが生きれば」と成果に期待している
河北新報