Amazonの真の脅威。それは電子書籍の先にある
Amazonの電子書籍が年内にも日本に進出するということで、日本のニュースが賑わっている。これを脅威だと感じる人は少なくないだろう。
けど、Amazonの本当の脅威はその先にある。そう、真の脅威は『出版社としてのAmazon』だ。
Amazonはこの秋、アメリカで122冊の本を出版する。電子書籍限定ではなく、紙媒体でも出版する。出版業界のベテラン、Laurence Kirshbaum率いるこの部門は、著名な作家に数千万円相当の報酬を出し、積極的にアプローチをかけている。
ニューヨークの出版社たちは恐怖で震えている。それもそのはずだ。この十年間でアメリカの最大手書店であるBordersやBarnes&Noblesを経営危機に追いやったあのAmazonが、今度は自分たちに矛先を向けたのだ。どう対応していいか分からないのだ。
Amazonは『書籍』のバリューチェーンの内、流通と小売りをほぼ独占した。その強みを足がかりに、ついに出版そのものにも手を伸ばし始めた。その姿は、垂直統合で石油市場に君臨したジョン・D・ロックフェラーのスタンダード・オイル社を連想させる。
僕ら消費者の中には出版業界に対し、「イノベーションを今までしてこなかったんだから、当然の報いだろう」と感じる人も少なくないだろう。
だが待ってほしい。危機に瀕しているのは本当に出版業界だけなのだろうか。読者である僕らに影響はないのか。
出版業界はものすごい数のタイトルを様々な作家から排出している。その面において、彼らは結構いい仕事をしている。果たしてAmazonに同じことが出来るだろうか。
一応、Amazonにも問題なく出来るはずだ。
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けど一社がコンテンツ提供を独占すると、どの情報が人々に届くかをコントロールできるようになる。そう、Appleが自分に都合の悪いアプリを殺した様に。
Amazonが出版を独占したならば、Amazonを批判する本はどうなるのだろうか。
現在の出版業界には出版社間の競争がある。一社が原稿を見送っても、他の出版社がそれに価値を見い出す可能性がある。
だが、もしAmazonが市場を独占したら?
Rebecca J. Rosen[1]
Amazonは出版業界の覇道を直実に進んでいる。近い将来、Amazonが出版業界を統合する日が本当に来るかもしれない。
その未来が見えた今、僕ら消費者はどんな未来を望むのかを考えなければならない。