「明日を生きる」「未来をひらく」
ふくしま会議2011
11月11日から13日までの「ふくしま会議2011」(主催 ふくしま会議運営委員会)の2日目の「明日を生きる」の分科会が12日に福島市の福島大学で開催された。
ふくしま会議の11日の全体会の記事
「3.11以降、未曾有の原発事故により福島の人々は放射能汚染と向き合わざるをえない状況に追い込まれました。暮らしが根底から一変しました。
6ヶ月たった今、前向きに生きようとする多くの福島の声が生まれています。しかし、それらの声はときに小さく、人々のいのちと暮らしを守るまでには至っていません。一つひとつの声を集めて、県内県外、そして世界のより多くの人々に届ける場が求められています。
声を行動に。ふくしま会議を開催します。
福島の声は、届けることも聴くことも、日本にとって、世界にとって、すべての人々にとって、未知の課題と向き合う力になります。
様々な意見を集約し、それぞれの人がそれぞれの答えを持ち帰る。
「ふくしま会議2011」は、福島の人々を中心に、いま聞きたい話を聞き、いま語りたいことを語る場所です。日本や世界から有識者たちを招き、福島のこれ までとこれからを語る場所です。内外の英知を福島に結集することで、放射能の不安や、故郷の再生に立ち向かう市民の疑問に応え、ときには車座になって直接
語り合う。明日への希望を見い出し、一つひとつのアイディアを実行に移していくこと、そして、福島の声を世界に届けていくことを目的として、福島の地で開催します。
多様な出会いが声を生み、声が広がり、行動が生まれる。私たちはそう信じています。」(同趣旨)
分科会として「いのち~こどもの今そして未来~」、「放射能と向き合う」、「ふくしまにふさわしい自然エネルギーのモデルとは」、「市民活動の現場から」、「若もの会議」が行われた。
分科会「ふくしまにふさわしい自然エネルギーのモデルとは」では、趣旨説明のあとに、一旦電気を止めて用意されたバイオデーゼル発電機を電源として音響に使い、LEDランプをつけ、福島のフォークデュオのIN THE WINDの演奏が行われた。
その後、いわき明星大学教授で福島県復興計画検討委員の東之弘氏の講演「福島における自然エネルギーの現状と将来の可能性」が行われた。
東氏は、二度の石油ショックを経て原子力にシフトしてきた日本の社会経済状況を説明し、現在の日本のエネルギーの現状を述べた。
また、全国3位の広さの県土をもつ福島県は、太陽や風力、バイオマスエネルギーの他にも雪氷、冷熱エネルギーなどの多様な新エネルギー資源が豊富に存在している事を指摘して、自らも参画している福島県の具体策である「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」について説明し、今後のあり方を語った。
「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」(仮称)
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/energy_01vision.pdf
地球と握手!うつくしまの新エネルギー - 福島県
http://www.pref.fukushima.jp/chiiki-shin/shinene/
バネルディスカション「再生可能エネルギーふくしまモデル」では、国立環境研究所の藤野純一氏がコーディネータとなって、東氏と福島大学教授の星野珙二氏、 東北大学教授の小濱泰昭氏、野口研究所所長の野口常夫氏、会津みしま自然エネルギー研究会の副会長の三澤真也氏、福島大学教授の牧田実氏がバネリストをつ とめた。
福島大学教授の星野氏は、「原材料や部品の調達、部品加工、製品組立てを経て流通業を経て消費者の手に渡るまでの、一連の供給連鎖の最適化に関わるマネジメント」であるサプライ・チェーン・マネジメントの専門家である。
同氏は、エネルギー流通にもサプライ・チェーン・マネジメントを応用し、中央集権型のエネルギー供給であった既存のエネルギーシステムを、自然・再生可能エネルギーや生活に適した分散型エネルギー供給を目指すことが重要と説いた。
東北大学教授の小濱氏は、マグネシウムと太陽エネルギーを組み合わせた新しい発電システムを開発し、宮崎県日向市にある同大の「太陽エネルギー利活用実験施設」で実用実験を行っている。
これは、酸化する時に発電するマグネシウムで電池をつくり、その使用済みのマグネシウム電池(酸化マグネシウム)を太陽光で精錬し、再利用し電源とするというもので、原材料のマグネシウムは広く海中に存在するという。
太陽炉によるマグネシウム製錬実証実験を東北大学が開始
http://www.mgciv.com/blog/tohoku-university-begins-an-experiment-for-smelting-magnesium-with-solar-thermal.html
野口研究所所長の野口氏は、専門の航空工学を応用した低風速で動く小型風力発電機を開発している。同氏が開発しているウィンドミル型風力発電機は、従来 は低風速では起動しない、また、動いても低速風域では発電が難しかったが、航空技術を活かした小型風力発電機シグナスミルを完成させた。
この小型風力発電機シグナスミルは、この特定の企業とではなく、大学と共同で誰でも使える物として開発し、実際に各地で使われ始めているので福島でもぜひ使ってほしいと述べた。
風力発電機シグナスミル
http://www.cygnusmill.co.jp/index.html
会津みしま自然エネルギー研究会の副会長の三澤氏は会津で各種自然エネルギー(小水力、風力、バイオマスなど)について知識を深めるために同研究会を多様な人々と設立して活動している。
同研究会にはいろいろな立場や考え方があるが、同氏などの20~30代のメンバーは、今の問題を単にエネルギーの問題ではなく、今までの社会やライフスタイルの問題だと考えて、生活の問い直しや小規模な水力発電、間伐材で水車を作くるなどから始めて行きたいと言う。
会津みしま自然エネルギー研究会
http://aizumsek.blogspot.com/
福島大学教授の牧田実氏が、県内裏の人々が原発事故で対立し、引き裂かれた福島の現状や原発体制、自然エネルギーの社会的あり方などを語った。また、脱原発をうたった「福島県復興ビジョン」や自然エネルギー推進に関する同氏の県民意識調査から県民の想いや考えを述べた。
その後の論議では、参加者からエネルギーのことは技術だけではなくライフスタイルの問題、また、昔からある「四方四里」の考え方(地産地消の考え方の元になったもの)の重要性、コミュニティサポートエナジィなどが論じられた。
福島は現在でも「しぜんにやさしい生活」があるとバネラーから指摘があり、野口氏からは自分たちのエネルギー技術を福島でぜひ使ってほしい、星野氏からは、それを地域出資の社会的起業で実現してほしいとの発言があった。
最後にコーディネーターの藤野氏が、自ら東京でふくしま会議に係り、今日に至った経緯を話して、「どうか、皆さんもそれぞれのふくしま会議を開催してほしい」と述べた。
福島県復興ビジョンの概要
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/fukkouvision_digest.pdf
福島県復興ビジョン
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24003
分科会「若もの会議」は午前は県の浜通り、中通り、会津、県外というふうにテーブルに分かれ、震災時の状況とその後の状況を語り合い、テーマを出し、他のテーブルのメッセージを見て交流した。
午後から地域毎ではなくテーマにわかれて議論していたが、そこに、午後に会場入りしてクローズドでの記者会見を終えた原発担当の細野大臣が登場したという。
(他の分科会に出ていた私が出席したころには大臣は退出していたので、以下は下記サイトからの引用)
原発担当の細野大臣は「挨拶では「阪神大震災のボランティアに参加したが4ヶ月くらいで被災地を離れることになり非常にもどかしい思いを抱えていた。その分原発を含めた福島の復興に尽力したい。」と述べられました。
「ふくしま会議の冒頭から参加できないこと申し訳なく思う。」と述べたところで、会場から「原発の再稼動はどういうことだ!」「悲痛な思いを持ってみんな 参加している。遅れて来てすまないだけではすまされない現実がある。」「昨日のUstreamを必ず見てください!」などの声があがりました。
それを受け、「必ずアーカイブ等見させていただく、気分を害されたとしたら申し訳ない。常識的に考えて行動する。」と述べられ会場を後にしました。」
ふくしま会議でわかったこと
http://fkprj.blogspot.com/2011/11/blog-post_14.html
13日の「未来をひらく」では、「NHK復興カレッジin福島大学」として鎌田實医師とジミナ・ナジェージダ医師の対話が行われ、「雇用の確保と産業の 創出を考える いわき」がいわき市の福島工業高等専門学校で、「ふくしまフロンティアfrom会津 ー3.11以降のふくしまにおける会津の役割は」が会津若松市ので稽古堂で行われ、相双地域への見学会も実施された。
放射能除染の問題は先がみえないが、福島県では、復興ビジョンに「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」を「再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会づくり」として取り入れ、復興を計画している。
このふくしま会議が、「未知の課題と向き合う」ために「様々な意見を集約し、それぞれの人がそれぞれの答えを持ち帰る」ことが目的のひとつだとしたら、 それぞれの場所でも「ふくしま会議」を開催したり、「明日を生きる」、「未来をひらく」ための行動をすることが重要ではないか。
いや、今の私にはそれぐらいしか言えない。
(参考)
ふくしま会議の録画
http://www.ustream.tv/channel/fukushima-kaigi04
ふくしま会議
http://www.fukushima-kaigi.jp/
ふくしま会議
https://www.facebook.com/FukushimaKaigi
「復興カレッジ in 福島 チェルノブイリからフクシマへ」参加報告
http://www.nhk.or.jp/ecochan-blog/400/101513.html