小出助教が心配する原子炉以外のこと
4号機の使用済み核燃料プールは、きわどい状態が続いている
12月29日(木)、テレビ朝日モーニングバード「そもそも総研」に京都大学原子炉実験所の小出裕章助教と、元経産官僚の古賀茂明氏が録画出演しました。
20分ほどの動画ですが、前半は元経産官僚の古賀茂明氏による日本財政破綻のシナリオについて。
(日本の財政破綻については、別の記事にします)
後半10:30からは、京都大学原子炉実験所の小出助教による福島第一原発の“燻ぶる”リスクについて、玉川徹ディレクターがインタビューしています。
例によって、削除されてしまう可能性があるので、文字起こしとともにキャプチャーを取ってあります。
政府・東電の言う「冷温停止」は、特殊な意味を持つ“造語”で、世界中の原子力専門家の間では通用しません。
通用するのは、歴史上、最悪の原発テロ企業・東電や、SPEEDI情報を官邸に上げず、大勢の人々を被曝させた殺人者集団である原子力安全・保安院、これも同様に、犯罪者同然の行状を繰り返している世界一無能な原発学者、斑目が委員長を務める原子力安全委員会、原子力利権を絶対に手放そうとしない経済産業省と文部科学省の間だけで通用する“単なる記号”にすぎません。
このことは何度も書いてきていますが、重要なので今後も何度でも繰り返します。
文字起こし10:30から-
小出助教:
私から見ると、今現在、戦争が続いているのです。
ナレーション:
12月16日、政府による事実上の原発事故収束宣言が出されました。
あたかも、原子炉の状況が、これ以上悪くなることがないとでも言いたげな印象を与えました。
しかし、原発の危険性を訴え続けてきた小出助教は、いまだ、私たちが安心できる状況にはない、と警鐘を鳴らします。
玉川D:
原子力専門家の方々の中では、「冷温停止」とは何を指す言葉なんですか?
どういう状態を言うんですか?
小出助教:
原子炉圧力容器という圧力釜が健全で中に水が溜まると…、穴が開いていないと…、そういう状態で炉心が、その水の中に浸かっている。
そして、その水の温度が100度Cを超えないというのが「冷温停止」という概念です。
玉川D:
ということは、圧力容器をもう破って、格納容器すら破っているという状況の中で、「冷温停止」という言葉自体がおかしいわけですね。
小出助教:
そんな言葉を使うこと自体がもう著しくおかしいし、工学的に言うなら常識をはるかに逸脱したことを言っているわけです。
玉川D:
政府が言っている「冷温停止」を解釈すると、何をもって「冷温停止」しているという言い方になっているわけですが?
小出助教:
少なくとも、「冷温停止」という概念が適用できないことは確実なんですが、政府や東電は仕方がないから、「冷温停止相当の」というような表現にしているわけですが、圧力容器も格納容器も100度Cを超えていないで、蒸気がどんどん噴き出してくる状態ではない、ということをもって「冷温停止」と言っているわけです。
ナレーション:
小出助教は、「1号機で落ちた燃料の高熱によって、コンクリートが65cm溶けている可能性がある」という東京電力の見解も、科学的には何ら証明されたものではないというのです。
小出助教:
みなさん想像して欲しいのですけれど、コンクリートの床があって、その上に2800度Cを超えた溶けた瀬戸物が落ちてくるわけです。
そのときに、水をたとえば上からかけたとしても、瀬戸物の表面は冷やすことはできるだろうけれど、コンクリートの中にめり込んでいっている溶けた塊は冷やせないわけです。
(東電、政府が発表した「65cmコンクリートを溶かしている」というような状況と違って)たぶん、もっともっとめり込んでいっているんだろうと思います。
それが、すでに突き抜けているかもしれないわけだし(管理人:下の岩盤をも溶かし始めている、ということ)、誰もそれを確認することができないという状態なんです。
ナレーション:
さらに、彼の心配は原子炉以外にも及んでいる。
小出助教:
今現在、4号機のプールなどが崩壊するかもしれない。
ナレーション:
福島第一原発で過酷事故を起こした4つの原子炉。
その中で、原発2基分の使用済み核燃料を今も冷やし続けているのが4号機の燃料プールです。
玉川D:
4号機のプールの崩壊というのは、たとえば新たな地震とか、そういうふうなもので、ということですか?
小出助教:
私が恐れているのは“地震”ですし、多分、東京電力もそれを恐れていて、4号機プールが崩壊してしまうかもしれないということで、プールを支える柱とか壁とかの補強工事を、かなり長い時間かけてやったと思います。
プール自身が崩壊するようなことになれば、水がもちろん流れちゃうわけですし、燃料棒が空気中にむき出しになりますので、そうなれば溶けてしまいます。
(溶けてしまえば、計り知れない量の放射性物質が大気中に)飛び出してきてしまいます。
ですから、4号危機はきわどい状態にあると思いますし、そのプールを崩壊させないようなことはやらなくてはいけないと思います。
ナレーション:
事故の第一義的な責任は、もちろん東京電力にあります。
しかし、この事故の背景には、なにが何でも原子力を推し進めたかった政府と官僚の思惑があり、そして、その思惑を裏から支え続けた大学の研究者たちの存在がありました。
玉川D:
今回ほど、学者の責任が問われたことはないんじゃないかと思うんですが、いわゆる御用学者というような人たちの存在が、ずいぶんクローズアップされたと思うんですけれど、そういう人たちの存在を、対極にいらっしゃった立場として、どう見ますか?
小出助教:
自分が何か間違いをすれば、自分で責任を取るしかないと思いますし、原子力を推進してきた人たちだって、自分がこれまでやってきたことの意味というのを、ちゃんと自分で考えて、それなりの責任を明確にする。
そして、責任を取るということを私は、やるべきだと思っているのですが、残念ながら、誰一人としてやらない。
チャップリンが(殺人狂時代という)映画をつくった。
その中で、「1人殺せば殺人者だけれども、100万人殺せば英雄だ」という言葉を言わせているんですね。
もし私が誰かに被曝をさせる、法律を超えて被曝をさせるようなことをすれば、私は犯罪者として国から処罰されたはずだと思いますけれども、その国、あるいは巨大産業である東京電力は、何百万人の人にも、被曝をさせているわけですね。
それでも、誰も責任を取らない。
ぬけぬけと、このまま逃げおおせるというようなことは、私は許したくないと思います。
ナレーション:
廃炉まで、少なくとも数十年。
次の世代まで引き継がれる、あまりに重いこの現実。
最後に私は、この問いを投げかけたのでした。