公海の環境保全、日米反対し大幅後退
【リオデジャネイロ共同=井田徹治】
違法な漁業活動で生態系が脅かされている公海の生物多様性を保全するため、早期に国際交渉を始めるとの文言が、国連持続可能な開発会議(リオ+20)で採択される文書から交渉の最終局面で削除され、議論を2年以上先送りする表現に大きく後退していたことが21日、分かった。
交渉関係者によると、米国やロシアが「決定は時期尚早だ」などと強く反対し、日本やカナダ、ベネズエラが同調した。環境保護団体は「少数の国の反対で公海の環境保全に極めて重要な機会が失われた」と5カ国を名指しで批判した。
海の面積の3分の2以上を占める公海は、国の領海に属さず、漁業など自由な経済活動が認められている。一部の漁業対象種への規制などはあるが、国の主権が及ばないため規制を無視した違法操業が横行。乱獲でクロマグロなどが絶滅の危機に追い込まれているほか、深海にある貴重なサンゴや海底地形がトロール漁で破壊される被害が起きている。
関係者によると、事務レベル交渉で議長国ブラジルが「(公海の)生物多様性保全と持続的利用に関する交渉を、国連総会の枠組みの中に可能な限り早く立ち上げる」との案を示し、発展途上国や欧州連合(EU)、オーストラリアなど多くの国が支持した。
だが19日未明の最終盤の交渉で、米国やロシア、日本などがこれに反対。最終的には、国連総会の下にすでに設置されている海洋問題に関する非公式の作業部会で検討を続け、2014年秋からの国連総会が終わる前に「公海の生物多様性保全と持続的な利用の問題を取り上げることを約束する」との弱い表現に変更された。
この経緯について日本政府筋は「非公式の交渉過程は明らかにできないが、現在は作業部会の議論がまだ続いている状態なので、当面はそこでの議論を続けるべきだというのが日本の主張だった」と説明している。