双葉町民155人、震災最後の避難所を助けて 収入年金だけなのに有料化
東日本大震災から1年9か月。福島第1原発がある福島・双葉町が役場機能を移した埼玉県加須市の旧県立騎西高校は、現在ただ一つ残る被災者の避難所だ。当初は町民1350人を受け入れ、今でも155人が暮らしている。その多くは75歳以上の後期高齢者。1日3食の弁当は9月から有料化され、出入りする弁当業者も年末年始は休業することが決まった。正月の“食糧難”への行政の対応の悪さに、住民やボランティアスタッフからは不満の声が高まっている。
「我々年寄りは他に行き場がねえし。家さ帰りてぇけど帰れないもんな」。避難所に暮らす70代の男性が自嘲気味に話した。教室の床に畳を敷き、その上に布団を敷いて寝ているが、真冬になれば底冷えがする。仕切りは段ボールだけ。そんな生活が1年9か月以上も続いている。
被災直後から町民の約2割に当たる1350人がさいたまスーパーアリーナに避難し、その後11年4月にこの地に移ってきた。仮設住宅に引っ越したり、親類宅を頼るなどして、その多くは新しい住居を見つけた。残された155人は全員が65歳以上。そのほとんどは後期高齢者で、要介護者も少なくない。
災害救助法に基づき、当初は3食の弁当が無償で支給されていたが、今年9月からは有料化(3食計1100円~)された。町の産業振興課は「ほとんどの町民が仮設住宅などで自立した生活を始めている中で、公平性を保つため」と説明する。避難所以外で暮らす町民からも、食事無償提供に異議の声があったという。
だが、避難所生活を強いられ、年金だけが頼りの高齢者には月3~4万円の食費は安くはない。中には1食分を3食に分けて食いつないでいる人もいるという。共用冷蔵庫があり自炊も可能だが、キッチン設備があるのは校舎の4階。階段を上り下りしての調理は、高齢者には骨が折れる。
今年8月、避難所から約1キロ離れた国道沿いに144坪の避難者支援サロン「ハーモニー」を開設したNPO法人ヒューマンソーシャルハーモニー研究所の臼井智香子代表理事(45)は「この状況で、他の避難者と公平だと言えるのか。共用で寝泊まりする部屋で食事をすればにおいも充満するし、衛生面にも問題が出てくる。他の避難者と同じ環境と考えること自体が間違いだ」と指摘した。
12月31日から1月2日までの3日間は弁当業者が休業となる。歩けない高齢者のために町役場の当直3人が現金を預かって食料の買い出しに行くことで対応するとしているが、あまりにも寂しい正月だ。臼井さんはボランティアスタッフとの協力で、31日に年越しそば、1日におせち料理、2日に餅つき、3日にとろろご飯を提供する準備を進めていたが「まさか弁当までは止まると思わなかった」と想定外の需要増を懸念している。
今年の正月は、全国からの炊き出し支援でにぎわったが、様相は一変する。人手、資金ともに不足するのは必至だ。臼井さんは「まだ避難所があること自体、もう忘れられているのかもしれない。ボランティアは正月のような時にこそ必要なんです」と訴えた。
◆避難者支援サロン「ハーモニー」(電)0480・53・4864
http://www.npohsh.com