「らき☆すた」ご当地コミケ ファン手作り、聖地で交流
久喜・鷲宮地区
東京ビッグサイトで年2回開催される世界最大の同人誌即売会「コミックマーケット」(コミケ)。昨年末は3日間で55万人を集めてサブカルチャーの勢いを示したが、作品の舞台地を会場にした「ご当地コミケ」も注目されている。聖地の雰囲気に浸りながら、共通の話題で交流できるのが人気の理由。アニメ「らき☆すた」の舞台となった久喜市鷲宮地区でも2月10日、らき☆すたのご当地コミケ「らき☆フェス」が開かれ、200人以上のファンが訪れた。
■企画、運営も
「新刊ありますよー」。久喜市鷲宮地区の本町集会所。畳張りのお座敷で、らき☆すたのキャラクター「泉こなた」に扮(ふん)した出展者が声を掛ける。来場者はテーブルの上に置かれた同人誌をめくって品定め。本のほかにもゲームやCD、ポストカードなどが並ぶ。どれもファンの「らき☆すたへの愛」が詰まった手作りグッズだ。
同人誌即売会はアニメやゲームのキャラクターを題材にした同人誌の売買を通じ、共通の趣味を持つ人々が交流を深める場。企業や自治体の主催ではなく、ファンが企画から運営まですべて担う。
この日は二つの集会所に計31サークルが出展。23人のスタッフが支えた。「本当にらき☆すたが好きな人たちが集まってくるので、コミケよりも気合が入った」。滋賀県草津市の会社員岡田太一さん(29)は、持参した新刊本40部が1時間余りで完売して満足げ。スタッフを務めたさいたま市の会社員鷲崎賢一さん(30)も、予想以上の人出に「初めてにしては上出来」と達成感をにじませる。
■地元の温かさ
らき☆フェスを主催したのは、鷲宮を訪れているファン有志。鷲宮商工会のらき☆すたイベントなどを通じて仲良くなり、「ファン主導のイベントを開催しよう」と準備会を立ち上げた。
「ご当地コミケ」は催事場を会場にしたコミケとは異なり、地元の理解と協力がなければ成り立たない。鷲宮駅前の「和風スナック記念日」ではイベントを盛り上げるため、ファンが撮影した鷲宮の写真を展示。ほかの店舗もポスターや地図を張るなどした。
グッズの入った紙袋を手に会場間の商店街を歩いていた神奈川県横須賀市の会社員西槙健司さん(40)は「お店の人が丁寧に道案内してくれて、地元の親切心が伝わってくる。コミケにはない温かさを感じた」と感激する。
■親しみ感じて
鷲宮とコミケはつながりが深い。地元の鷲宮神社には今年の正月三が日に47万人が参拝に訪れたが、ファンの間ではコミケ帰りに鷲宮神社に寄り、年越しを迎えるのがお決まりのコースとなっている。「鷲宮でもコミケを」という声は以前から上がっていた。
ただ、大勢が押し寄せるコミケにはマナー問題などが付きまとう。そこで、らき☆フェスではホームページで「開場前に来場しない」「ゴミは持ち帰る」といった注意事項を周知。来場者も混雑緩和のために入場時間をずらすなど配慮した。
今後の課題について、準備会代表の森山忠義さん(32)は「地元の人も参加しやすい仕組みづくり」を挙げる。地元の来場者は1割未満。敷居の高さは否めない。「イベントの目的は交流。ファンと地元が触れ合って、らき☆すたと鷲宮に親しみを感じてもらいたい」
【コミックマーケット】
アニメや漫画、ゲームをモチーフとした同人誌即売会。8月の夏コミ、12月の冬コミの年2回行われる。初開催は1975年。規模拡大に伴い開催地が移転し、現在は東京ビッグサイトを会場としている。発表の場を求める同人サークルのほか、近年は企業の参加も増加。まちおこしを兼ねて不定期に開催される「地方コミケ」もある。