20130318

忘れない 震災から2年<3>双葉町民と共に歩む 支援者上尾の鈴木、末吉さん

 


「顔見に来たよ」「何か変わりはない?」-。東京電力福島第一原発事故で、福島県双葉町が役場機能ごと避難している加須市の旧騎西高校。「被災者支援ボランティア福祉班」として活動する鈴木玲子さん(56)と末吉一美さん(46)=ともに上尾市=が七日、生徒ホールに姿を見せると、町民たちの顔がパッと明るくなった。

 

福祉班としての活動は二〇一一年三月、約千二百人の双葉町民が避難してきたさいたまスーパーアリーナ(さいたま市中央区)で始まった。NPO法人「彩の子ネットワーク」で子育て支援に携わってきた二人は、母子や高齢者に「足りないものは」「何か困ったことは」と聞いて回り、関連の支援団体につなげた。双葉町民の避難先が旧騎西高校に移った後も、町民の声に耳を傾けようと、福祉班は同校に通い続けた。 心身共に疲れ果てていた町民たちから、本音を引き出すことは難しかった。鈴木さんが初めて声をかけた女性は、涙を浮かべて逃げてしまった。町民が寝泊まりをしている教室のドアを開けると、「放っておいてほしい」という空気が伝わってきた。それでも鈴木さんたちは「感情をぶつけられてもいい。心を許せる相手が必要なんだ」と言い聞かせ、声をかけ続けた。 「震災前は当たり前だったことができなくなり、つらいんだ」。耳を傾けるうち、町民から同じような声が聞こえてきた。「みんなの『やりたい』という気持ちを支えよう」。震災から約二カ月後、日常を取り戻す活動が始まった。 毎年、特製の梅干しを漬け、近所に配っていたという男性には「作り方を教えて」と提案し、一緒に梅を漬けた。大好評となり、男性に笑顔が戻った。縫製工場で働き、「ミシンから離れたことがない」という女性は、ミシン教室の講師として活動するうち、生きがいを見いだすように。編み物や絵手紙、習字など、町民の作品を集めた展示会も二年続けて開いた。準備から片付けまで、福祉班と町民が一緒に成し遂げた。 震災から二年、避難直後のような応急的な支援はなくなり、避難先での新たな日常ができつつある。福祉班のメンバーが旧騎西高校を訪れる回数も、今では月一、二回ほどに減った。 末吉さんは昨年五月から、さいたま市内の病院で看護助手として働き始めた。顔見知りの町民からは「このごろ来ないね」と寂しがられる。そのたびに「ボランティアって何だろう」と考える。一年目はできることをやろうと走り続けた。最近になって、活動を続ける理由がわかってきた。 「私は何かできるわけじゃないし、その人に代わってあげることもできない。高校に来て一緒にいるだけ。支援をしようというのではないんです。同じ時間を一緒に生きたい。それを双葉の人たちがうれしいと思ってくれたらうれしい。それだけなんです」 福祉班の活動はいつまで続くのか。「旧騎西高校が避難所じゃなくなるまで来ます。一緒に梅干しを漬けたり、ばか話をしたりしたいんです」。鈴木さんも末吉さんもそう言ってほほ笑んだ。(増田紗苗)

  Slowtimes.netは、誰もが生きやすい生活や仕事のありかた(スローライフ・スローワーク)について考えたい、何かしてみたいというひとに情報を提供する市民メディア、オルタナティブメディアで、ネットワークトジャーナリズムを目指しています。

   Slowtimes.netサイトをリニューアルしました。このサイトは最初はウェブ(HTML)でつくられ、続いてCMS(Xoops)となり、さらに、今回の形となりました。

   今回のSlowtimes.netサイトのリニューアルは、ネットの情報発信がメールマガジンやメールニュースなどの「メールメディア」とブログなどの「ウェブメディア」を融合し、映像や音声を使ったカタチにシフトしていくのに対応したものです。

関連しているもの(リンク)

 

◆メールニュース・メールマガジン

 1999年より発行のメールニュースの週刊「S-Report」は、20年を超えて、メール配信しました。
 現在はこの場所で配信しています。

 

 

◆メディア★カフェ
メディア★カフェはメディアや情報をテーマにしている活動を紹介し、気軽に話し合うカフェです。

 カフェTV、市民メディア・ブレゼン、インフォマーシャル(Infomercial)などを行います。

 

◆フォーラム

 市民メディア全国交流協議会、MELL EXPO (メル・エキスポ)どのメディアのフォーラムに参加しています。

 

サイト・プライバシーポリシー

 当サイトではサイト・プライバシーポリシー・サイト参加規約などを定めています。

 

検索

 

   (c) Slowtimes.net

2009.2006.2004.1999 All rights reserved

(関係サイト)