原発事故と水俣病を乗り越え、農業・地域づくりを語り合う
一般財団法人CSOネットワークは3月13日、熊本県水俣市で「水俣と福島をつなぐフォーラム」を開いた。福島県や水俣市で農業や地域づくりに励む人たちが、原発事故や水俣病という大規模公害を乗り越えて有機農業に取り組む上での苦労や成果を語り合った。
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福島県有機農業ネットワークの菅野正寿理事長は、福島第一原発事故の前から、二本松市で農業の再生と地域循環型の構築に取り組んできた。
「道の駅ふくしま東和」の運営を受託し、地域の野菜や加工品、特産品の製造販売などを手がけて、現在はパートも含め24人を雇用している。新規就農者も県外を含めて約30人を受け入れた。
「農民は環境の生産者。農業を守り続けていかなくてはならない」と奮起する菅野理事長は、原発事故後、放射能汚染や風評被害という新たな課題に向き合いながら農業を継続。全国各地から招きを受け、その取り組みについて発信している。
リアス式海岸の入り江や棚田など豊富な自然資源を持つ水俣市内では、各地で地域づくりの活動が展開されている。そのうち村おこし施設「愛林館」は、「エコロジー(風土・循環・自立)に基づくむらおこし」をテーマに、廃線となったJR線の駅跡地に94年に建てられた。
「今後2000年間、この地に人が住み森と棚田を守っていける村づくり」(沢畑亨・愛林館館長)を目指して、グリーンツーリズムや田援計画(でんえんプロジェクト)と名付けられた棚田保全活動など、ユニークなプログラムを展開している。
若者たちを中心としたゆるやかなネットワーク団体「あばぁこんね」は、水俣弁で「じゃあ、おいでよ!」を意味する団体名のもと、水俣に関心を持ったメンバーを全国各地に抱えている。
交流会や地域復興のものづくり、福島や東京でのマルシェなどの展開の他、色彩豊かな水俣を伝えたいと、鮮やかな海の写真のクリアファイルを作成した。水俣病の教訓を活かし、そしてそのイメージを超えようと、地域に新たな活力が芽生えている。
今回初めて水俣を訪れたという菅野さんは、このフォーラムに先立って水俣病歴史資料館で地元の語り部に話を聞いた。「亡くなった母親が、病気のつらさよりも差別の方が辛いと話したのが印象的だった。福島も風評被害など、水俣に似た多くの課題を抱える。水俣での学びを福島の復興に活かしていきたい」と語った。
福島県有機農業ネットワークは3月16日、東京・下北沢にコミュニティ&オーガニックカフェ「ふくしまオルガン堂」を開設した。福島県の情報発信や東京に避難した福島県民の集う場をつくることを目指している。(今井麻希子)