大震災2年 被災地の自治/脱行政依存から始めたい
震災から2年。被災地の状況は確実に悪化している。
宮城県は先日、沿岸15市町の職員不足が新年度、計300人程度になるとの見通しを明らかにした。復興事業が本格化するにつれ、マンパワー不足も加速するというジレンマに直面している。
全国からの支援も、曲がり角に差し掛かっている。
被災3県に全国各地から派遣されている職員は1月末で計944人。多くの自治体が「応援派遣は限界」としており、これ以上の増員は望めそうにない。
どうやら、自治の原点に立ち戻るときが訪れたようだ。
千年に一度ともいわれる大津波が全てを押し流したことを考えれば、自治の在り方もまたゼロから構築するほかない。ヒントは足元にある。
外形的には震災ですっかり疲弊したかに見える被災地だが、少し視点をずらせば、サポーターのような大勢の「新住民」が、共にいることに気付かされるはずだ。
被災した浜にはNPO関係者が入り、住民との交流を続けている。公共の担い手と言えば行政以外には社会福祉協議会ぐらいしかなかった地域で、NPOの取り組みは、仮設住宅の管理・運営のほか漁業など地場産業の再生支援、介護・福祉サービスの提供と多岐にわたる。
逆に、古里に思いを残しながら被災地を離れざるを得なかった人や、父祖の地との結び付きを望む人もいるだろう。
広範囲に分散、孤立している被災地だったとしても、この2年間で育まれた連携はさらに広範囲だった。域外の人々を組み込んで、大胆に展開する全く新しい自治のモデルを発信してほしい。
復旧事務に忙殺される行政とNPOの活躍は、裏表の関係といえる。公共サービスの大部分は、その気になれば自分たちで担えるのだという当たり前の事実も再確認したい。
例えばフランスには、人口2千人に満たない基礎自治体が約3万4千もある。こうした村には10人前後の職員がいるだけで、行政は最低限のサービスしか行わない。代わりに村民の大半が何らかのNPOに関わり、消防や学校給食、図書館などを運営している。
福島県会津坂下町は町役場の隣に「第二町役場」を置き、住民団体が行政事務の一部を肩代わりしている。新潟県中越地震で被災した山古志村(現長岡市)は、住民でつくる自治協議会が予算と権限を行使し、地域社会をよみがえらせた。
共通するのは、人口減少や大災害という受け流しようのない試練が、地域の自治意識を覚醒させた点だ。
何でも行政に依存する行動様式が習い性となってしまった私たちは、元のかたちを取り戻すことにこだわりすぎていないだろうか。
復旧と復興でその意味するところが違うように、被災地の自治も単なる再建では済まない。求められるのは自治の創造だ。
2013年03月17日日曜日
河北新報 コルネット 社説 大震災2年 被災地の自治/脱行政依存から始めたい