閉鎖性強める大槌町 朝日新聞岩手 2013/4/13
【東野真和】
「住民との情報共有」を掲げる大槌町が逆に密室性を強めている。災害公営住宅の検討会議を非公開にし、町議会も傍聴できない機会が増えている。「これでは住民参加の町はできない」との声も出始めている。
1日の職員辞令交付式で碇川豊町長は「情報は隠すことなく公開する方針でのぞんでほしい」とあいさつに付け加えた。
しかし、実際は、だんだんと反対の方向に進みつつある。
「傍聴できません」
災害公営住宅の入居基準などを決める整備計画検討委員会。報道陣や一般町民は、3階の大会議室前で止められる。
委員は、3人の副町長のほか学者、町議、建設する都市再生機構職員ら。関係部署の職員や請負業者らが傍聴する。
募集方法や、間取り、優先入居の基準、ペットは可能かなど、町民には最も関心の高い会議だが、過去6回、資料さえ出さない「秘密会」が続いている。
初回には「公開を検討する」と町側が説明したが、結局、各会議直後に議論の内容を伝える「ブリーフィング」さえされない。参加町議が町民に報告会を開くこともない。
座長の大月敏雄東大院准教授は「フィクス(確定)されない検討途中のものを個別に情報として出すと混乱を招く」と説明する。しかし、参加委員の一人は「個人的には公開で議論したほうがいいと思う。一言も発言しない委員もいる。それが恥ずかしくて公開できないのだろう」と話す。
大槌町で「大槌新聞」を毎週発行する高田由貴子さんは、「関心があるからこそ、オープンな場で議論してほしい」と憤る。「町民参加を募る会合さえ限られた人しか来ない。巻き込むくらいでないと。決まってから町民に報告して、文句が出る。これでは震災前と同じだ」
元知事・総務相の増田寛也・東大公共政策大学院客員教授は「すべてを公開すべきかは別にして、多くの自治体は、意見を募って住民に参加させる方向にある。そうしないと、いい基準ができない」と指摘する。
町議会の密室性も高まっている。
震災後、傍聴が許されていた常任委員会や政務調査会も、「非公開」が増えてきた。3月26日や4月9日には、公開が原則の全員協議会も非公開となった。3月の全協は、役場側からの希望もあった。
議会事務局長は「本会議と全員協議会以外は原則非公開。委員長が認めた時のみ公開する」と説明する。
朝日新聞社が県内の他の13の町議会事務局に取材したところ、雫石町、葛巻町など8町が「公開」もしくは「原則公開」と答えた。「非公開」「原則非公開」は洋野町と岩泉町、「どちらでもなく、委員長の判断」が、一戸町、紫波町、山田町の3町だった。
http://digital.asahi.com/area/iwate/articles/MTW1304130300002.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_MTW130413030000朝日新聞デジタル:会員登録のご案内digital.asahi.com