日本原子力発電(原電)が、敦賀原発2号機(福井県敦賀市)の真下に活断層があると認定した原子力規制委員会の調査チームの専門家たちに、「厳重抗議」と題した異例の文書を送りつけた。専門家からは「個人として抗議されるのはおかしい」など戸惑いの声が出ている。今後、各原発での活断層調査に当たる専門家への影響も懸念される。 (大村歩)
十七日、議論のやり直しを要請するため規制委を訪れた原電の浜田康男社長は「専門家はわれわれの意見をほとんど無視した。だから抗議文を送った」と報道陣に言い放った。
専門家たちは規制委の依頼を受け、科学的なデータを基に断層が活断層かどうかを客観的に判断。その報告を基に、原発の運転を認めるのかどうかを判断するのは規制委。抗議するなら、その相手は規制委のはずだ。
原電は、評価に加わった五人の各専門家の宛名を書いた厳重抗議を規制委事務局に手渡した。
事務局は、原電への対応は規制委がするとのただし書きをつけ、専門家に郵送したという。
一方、受け取った専門家側は驚きと不快感を隠せない。
「非常に嫌な気持ちだ。われわれの結論をどう扱うかは規制委の問題で、個人宛てに出すのはおかしい」。京都大の堤浩之准教授はこう語る。東京学芸大の藤本光一郎准教授も「一般的な諮問会議とかでは、あり得ないのでは。いい気持ちはしない」と話した。
名古屋大の鈴木康弘教授は「審査された側が、審査に協力した外部の専門家に抗議文を押しつけるのはいかがなものか」と指摘。「研究者個人の勇気や使命感に頼った審査体制ではいけない」と規制委にも注文をつけた。
記者会見で、専門家が圧力を感じながら議論する問題点を問われた規制委事務局の森本英香次長は「科学的な観点で議論してもらうために、いい環境はつくっていきたい」と語ったが、具体策には触れずじまい。
こうした抗議が専門家への圧力となる可能性については「コメントを差し控えたい」と述べるにとどまった。
(東京新聞)