津波犠牲、回避できた 釜石・鵜住居防災センター中間報告
報告書の内容を野田市長(左)に説明する斎藤委員長(中)=釜石市役所 東日本大震災で避難した多くの住民らが津波で犠牲になった岩手県釜石市鵜住居地区防災センターについて、市が設置した被災調査委員会は2日、中間報告書をまとめ、野田武則市長に提出した。行政の適切な対応で命を救う機会は多くあったとし「事態を回避することは可能だった。市の責任は重い」と指摘した。
中間報告書はセンターへの避難者数、正しい避難場所の周知など8項目を調査、検討した。 避難者数については、センター遺族連絡会が「一人の犠牲者も漏らしたくない」として、現時点での最大限の可能性を考慮し244人とした推計を認めた。センターに避難した可能性はあるが具体的な裏付けがない82人を含め、市は被災状況を継続的に調査する責任があると言及した。 「防災センター」の名称は、財源確保のため有利な防災起債を利用したことが要因とし、名称が津波の際の1次避難場所という認識を生んだと指摘。本来の避難場所ではないのに避難訓練時に使用するなど誤った運用が、多くの犠牲者を出したと判断した。 津波の1次避難場所でないことの周知が不十分だったとも強調。当時の市職員の危機管理の認識も十分でなかったと結論づけた。 委員長の斎藤徳美岩手大名誉教授は「犯人捜しではなく、問題点を洗い出し、今後どう生かすかに主眼を置いた。従来の津波防災対策は役に立たなかったので、異なる発想で対策を練る必要がある」と述べた。 野田市長は「報告書の内容を庁内で検討し、今後の対応を考えたい」と語り、5日に責任問題も含めた市の見解を明らかにする考えを示した。 調査委は、行政と住民が一体となって教訓を生かすため、遺族連絡会の代表、市の防災担当者も委員に加えた有識者7人で構成した。 中間報告書に防災対策を加えた最終報告書は来年3月11日までに出す。