「悪いのは福島県!」復興庁副大臣が被災者への説明会で爆弾発言
放射能汚染に悩む福島を訪れるたびに、耳にする囁きがある。
福島県は県外避難者を冷遇している―。
避難者が増えれば、人口が減り、県勢が衰える。福島県はそれを防ごうと、放射線量の高い地域にとどまる住民には手厚い支援をする一方で、県外避難者をわざと冷たくあしらっているというのだ。
確かに、県内にとどまる、あるいは県外の避難先から帰還する被災者への支援は手厚い。医療費援助、就労支援、子供のリフレッシュ事業など、メニューはバラエティに富んでいる。
一方、放射能被曝を避けようと、県外へ避難した人々への支援は乏しい。避難先と福島を行き来する高速道路の料金無料化が目を引くくらいだ。郡山市に住む女性もこう証言する。
「とにかく行政は『避難』という言葉遣いを嫌がる。以前、『母子避難』をテーマに公開の市民講座を開こうと、公民館に会議室の利用を申請したんです。すると、担当者から『避難という言葉は人聞きが悪い。できるなら、保養という言葉に変えてほしい』と迫られたこともありました」
もし、こうした現地での囁きが真実なら、由々しき問題だ。住民の「避難の権利」を侵すばかりか、県内にとどまる住民を優遇することで、人々を線量の高い地域に縛りつけ、無用の被曝を強いることにもなりかねない。
ただ、福島県が県外避難者を冷遇しているという確たる“証拠”はどこにもなかった。
ところが―。
なんと、復興庁の浜田昌良副大臣が公の席で、その証拠(?)をポロリと漏らしてしまったのだ。
それは9月13日、復興庁が「子ども・被災者支援法」の基本方針をめぐり、東京・有明で説明会を開いたときのこと。
参加者のひとりが語る。
「支援対象の地域が福島県内33市町村に限られるとの情報もあって、会場は撤回を求める参加者で殺気立っていました。なかでも復興庁への批判が集中したのが、新たに避難を希望する住民への支援策がまったくなかったことです」
副大臣の爆弾発言が飛び出したのはその直後のことだった。避難者向け支援策が盛り込まれていないことを釈明するかのように、こう切り出してしまったのだ。
「住宅借り上げの新規希望の声はたくさんある。しかし、福島県の同意がなく、現段階では盛り込めなかった。福島県としてはやはり県民に帰ってきてほしいという思いがあるのでしょう。(中略)子供の自然体験活動においてもはっきり言いますけど、福島県は(県外での実施に)反対した」
その場にいた「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク」副代表の福田健治弁護士があきれる。
「福島県にとどまるだけでなく、避難することも住民の選択肢として認め、国の責任において支援するというのが、子ども・被災者支援法です。あくまでも施策を実行するのは国で、自治体の同意は必要とはされていません。福島県の反対があるからやれなかったという浜田副大臣の発言は、まったくの言い訳にすぎません」
しかも、昨年12月末に打ち切られた借り上げ住宅の新規受け付けは、実は復興庁が厚労省に圧力をかけ実施された、との8月23日付の内部文書が福島県庁から流出している。
福田弁護士が苦笑する。
「もし、その文書にあることが事実だとしたら、復興庁は自ら主導した施策切りを福島県になすりつけたことになりますね」
復興庁と福島県。いったい、どちらの言い分が正しいのか? 避難を望みながら、支援を受けられずにいる被災者のためにも、浜田副大臣は明らかにすべきでは?
(取材・文/姜誠)