再処理工場の完成時期「未定」に変更 日本原燃
日本原燃は29日、現行計画で10月としていた使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の完成時期を正式に延期し「未定」に変更する方針を明らかにした。延期は20回目で、時期を明示しないのは初めて。今週中にも計画の変更を原子力規制委員会に届け出る。
川井吉彦社長は同日、青森市で記者会見し、未定とした理由を「規制委が12月までに決める、新規制基準の内容を踏まえた検討が必要なため」と説明した。
新基準は12月中旬までに施行される予定。川井社長は「施行後、対応内容と新たな工程を青森県と六ケ所村に示し、事前了解を得てから審査を申請したい」と述べた。
規制委は、2014年3月にまとめる青森県下北半島の地下構造調査の結果を、今後の審査に反映させる意向も示しており、再処理工場の完成は14年度以降にずれ込む公算が大きい。
原燃は、13年度内の操業開始を想定した再処理施設使用計画(13~15年度)についても未定に変更し、規制委に届け出る。計画では、再処理量を13年度80トン、14年度320トン、15年度480トンなどと定めていた。
記者会見に先立ち、川井社長ら幹部は県や県議会、六ケ所村に延期を報告。佐々木郁夫副知事は「安全確保が第一。新規制基準にしっかり対応してほしい」と求めた。六ケ所村の戸田衛副村長は取材に「延期幅が1カ月なのか1年なのか、もっと先なのか分からない。村の財政に与える影響は大きい」と語った。
◎「技術より安全」高い壁
【解説】核燃料サイクル政策の要、使用済み核燃料再処理工場の完成時期を日本原燃が「未定」とした背景には、福島第1原発事故を踏まえた安全規制の強化がある。サイクル施設も原発並みの安全対策が求められる。原発では半年程度とされる審査期間も不透明で、原燃は見通しを立てられなかった。
サイクル施設の新規制基準の骨子案は7月に公表され、地震、津波対策の強化や重大事故対策の徹底が盛り込まれた。原燃は、新基準を先取りし可搬式の防災設備などを追加配備したが、全体的な対応策は新基準の最終決定を待たざるを得ないのが実情だ。
さらに流動的な要素として、下北半島東部沖に大規模な活断層が存在するとの指摘がある。
事業者とは別に規制委が独自調査する。「調査手法の確立が目的」(原子力規制庁)としながらも、調査で得た新しいデータや知見は審査に生かすという。結果に基づいて耐震強化を求める可能性があり、スケジュールにも影響を及ぼす。
再処理工場では、難航した高レベル放射性廃液のガラス固化試験がことし5月に終了した。原燃は「技術的課題は克服した」と説明するが、安全対策の徹底になおハードルが横たわることを意識する必要がある。
(青森総局・藤田和彦)
◎中間貯蔵も操業「未定」
東京電力と日本原子力発電が出資するリサイクル燃料貯蔵(RFS)は29日、青森県むつ市に建設した使用済み核燃料中間貯蔵施設の操業開始時期について、現行計画の10月から「未定」に変更したと発表した。近く原子力規制委員会に届け出る。
RFSの久保誠社長が青森市内で記者会見し、明らかにした。12月に施行予定の核燃料サイクル施設の新規制基準に適合する必要があるためで、規制委の安全審査に要する期間が現段階で見通せないことから、時期の明示を見送った。
久保社長は、ことし1月に規制委に提出していた燃料貯蔵計画についても「変更の届けを出す。未定とせざるを得ない」と説明した。
RFSは冬期間の貯蔵施設への燃料搬入作業を想定しておらず、操業開始は来年春以降にずれ込む可能性がある。貯蔵建屋は8月末に完成した。
RFSは同日、青森県、県議会、むつ市に操業開始の延期を報告。宮下順一郎むつ市長は「新基準の不確定要素が多いことから未定としたのだろう。事業者は安全を第一義に早期の操業開始に向けて対応してほしい」との談話を出した。