私も参加した国連「世界情報社会サミット(WSIS)」のアジア・太平洋地域地域会合がおこなわれ、15日にその「WSIS東京宣言」が採択されました。
国連「世界情報社会サミット(WSIS)」のアジア・太平洋地域会合(以下、WSIS東京)はアジア・太平洋地域の43カ国を始めとして、数多くの国際機関・地域の代表や企業のほか、私たち116のNGO・市民団体が参加して12月に国連がスイスのジュネーブで開かれる「世界情報社会サミット(WSIS)」に向けてアジア・太平洋地域におけるICT(IT)や情報社会に関する有益な論議がおこなわれました。
世界情報社会サミットアジア・太平洋地域会合 http://www.wsis-japan.jp/
東京宣言 http://www.wsis-japan.jp/documents/tokyo_declaration.html
論議やステートメントの詳細は(一部ですが) http://www.wsis-japan.jp/documents/contributions.html
このWSIS東京は国連サミットの地域会合としては初めて国家や国際機関ばかりでなく、企業、そして、NGO・市民団体の参加(オブサーバーとしての参加ですが)を保証する画期的なものでした。
参加者は Nation (国)、International organization(国際機関)、Private sector (民間、私企業等)、Civil society・NGO's(市民社会・NGO)の4者で構成され問題毎に討論が行われました。また、東京「宣言文確定会議(wrap up session)」にはこの会議参加者が誰もが参加できて「WSIS東京宣言」草案を討議することができました。これも今までに例のないことです。
しかし、WSIS東京の2日目の14日には 各国政府、組織、市民団体などによる声明発表が予定されていたが、中国政府代表が、台湾のNGOが参加していることについて「NGOの参加認定(accreditation)は各国政府が行うのが国連のルールだ。主催者は間違った方法を是正すべきだ」と抗議。事務局とインドが「NGOの参加を非公式として取り扱う」という代替案を示したが、ロシア、パキスタンなどが中国を支持して議論が続いた。
中国の主張の背景には、12月にスイスで予定されている「世界情報社会サミット」についても、台湾からのNGOだけでなく、中国政府が承認した以外のNGOの参加を確実に排除するという狙いがあるとみられる。中国は、インターネット規制を強める傾向にあり、抗議には、こうした政策について批判的な市民団体の参加を防ぎたいという思惑が見え隠れしている。
一方、NGO・NPO側は、国連総会で、同サミットや地域準備会合で、市民やNGOからの参加を積極的に得て、情報化社会の多様な側面をとり上げるよう決議していることから、反発もみられる。地域会合では結局、NGO全体の参加をオブサーバーではなく非公式、としたうえで、非公式参加NGOのリストから台湾を外す形で決着し、中国が粘り勝った形になっている。
「世界情報社会サミットアジア地域会合 NGOの参加資格で紛糾」 毎日新聞 1月14日 太田阿利佐
しかし、このようにまだいくつかの国が「批判的な市民団体の参加を防ぎたい」という現実があります。そして、一部の国々の政府代表が国家利益によって市民社会やNGOの活動を認めないということが明らかになりました。 このような事態に対してアジアのNGOは台湾のNGOも含めたNGOの扱いや最終的な宣言文に対して抗議をして、15日にNGOコミュニティとしての声明を発表しました。
(この詳細については後日また)
今回採択された「WSIS東京宣言」にはこうあります。
(2)実施のための優先分野 g)パートナーシップの育成とリソースの結集
民間・私企業等(Private sector)がICT(情報通信技術)の普及と開発に関して重要な役割を果たし、一方では、市民社会・NGO(Civil society・NGO's)はコミュニティにおけるICT(情報通信技術)のイニシィアティブの強化に密接に関わっている。
(これらの)効果的な参画と多様なイニシィアティブの確保には政府、政府間組織と私企業等(Private sector)市民社会(Civil society)間の協力とパートナーシップの促進が必要とされる。
これらすべての参画者は情報社会発展のために、情報通信のインフラへの投資の増大、人材育成、政策の枠組みの策定や文化、地域固有のコンテンツやアブリケーションの開発などのリソースを結集しなくてはならない。
「3.地域の情報社会への助言」「東京宣言」
"The ToKyo Declaration - the Asia-Pacific to WSIS non Paper" Doc.C36 / 14 Jan 2003
The World Summit on the Information Society Asian Regional Conference
このように、これからはICT(情報通信技術)による情報社会の構築においても、市民社会・NGO(Civil society・NGO's)がイニシィアティブを発揮し、政府、政府間組織と私企業等(Private sector)と協力しパートナーシップを組んでいくことが優先課題です。
また、国家のためではなく、人々のためのICT(情報通信技術)の活用と情報社会の構築には市民社会・NGO(Civil society・NGO's)の力が必要不可欠です。
「東京宣言」では結論的には「国家・国際情報戦略」(e- Strategy)の構築が重要であるとされていますが、いくら国家戦略によってICT(情報通信技術)の振興をはかっても人々の協力がなくては達成できません。そのためにはこの問題に対してすべての参画者・セクターが「排除」ではなく「協力」をすることが重要です。
このことを示したのが15日のNGOコミッティの声明のとき掲げられたスローガン”WSIS 4 ALL”です。
”WSIS 4 ALL” この意味を私はこう解釈しています。
"The World Summit on the Information Society For All"
「世界情報社会サミットはNation (国)、International organization(国際機関)、Private sector (民間、私企業等)、Civil society・NGO's(市民社会・NGO)の4者すべてのためのものである。」
週刊 『S-Report』 1/16号 長岡素彦